漱石の処女作「吾輩は猫である」は、明治38年、「ホトトギス」に掲載されるや大反響。現在でも、日本人なら誰もが知るところで、多くの人々に愛されています。「吾輩は猫である。名前はまだ無い」というユニークな書き出しは、ついつい、その先を読んでみたくなり、また、猫の目を通して、人間の日常を語られていることも興味深く、さすが、名作には多くの魅力的な点があるものです。
その中で、個人的に最も興味をそそられたのは、その題名です。猫にもかかわらず、一人称を、「私」でもなく、「僕」でもなく、「吾輩」ときました。それを時代的背景というならば、「小生」でもよかったはず。何とも面白いですね。漱石は、当初、「猫伝」と考えていたそうですが、文章会仲間の高浜虚子から、冒頭の一句を、そのまま題名にしてはどうかと言われて、「名前はどうでもよい。勝手にしろ。」なんていうやり取りがあったそうです。文豪による歴史的名作の題名が、こんな感じでよいのか?と、勝手に悩んだりしてしまいます。
もし、題名が「猫伝」だったとしたら、個性がなく、重くかしこまった感じになっていたでしょう。そして、作品の雰囲気は全く違ったものになり、これほど親しまれなかったのではないかなどと想像してしまいます。100年以上も前の明治時代に、「吾輩は猫である」という、この感覚!まさに、現代に通ずる、名キャッチコピーではありませんか!
事務局 武田
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